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聖家族 (ミケランジェロ) : ウィキペディア日本語版 | 聖家族 (ミケランジェロ)[せいかぞく]
『聖家族』(せいかぞく、)は、ルネサンス盛期のイタリア人芸術家ミケランジェロ・ブオナローティが1507年ごろに描いた絵画。油彩とテンペラで描かれたパネル絵で、現存しているわずか3枚のミケランジェロのパネル絵のなかの1枚であり、かつ唯一完成している作品である〔:en:The Torment of Saint Anthony (Michelangelo), a copy, was done when he was twelve or thirteen〕〔Hayum,209〕。フィレンツェのウフィツィ美術館所蔵で、当時のままの額装がなされている。この作品は、トスカーナの有力な家庭の娘マッダレーナとの結婚を記念して、フィレンツェの商人アニョロ・ドーニ (Agnolo Doni) の依頼で描かれた作品とされている〔Hayum,211〕〔他にミケランジェロはアニョロ・ドーニの肖像画も描いている〕。円形の絵画 (:en:tondo)で、これはルネサンス期によく見られたスタイルである〔Hayum,210〕〔イタリア語の題名「Tondo Doni」は「ドーニ家の円形画」という意味になり、日本では『ドーニ家の聖家族』と呼ばれることもある〕。 『聖家族』が描かれたのはドーニが結婚した1503年/1504年から数年後とされている。これは現在バチカン美術館が所蔵している古代彫刻『ラオコーン像』が発掘された1506年以降、システィーナ礼拝堂天井画の制作が開始された1508年以前と考えられているためで、この作品の制作年度は1506年の終わりか1507年といわれている〔Painted Devotional Tondi, 219〕。『聖家族』は幼児キリスト、聖母マリア、聖ヨセフの家族と洗礼者ヨハネが前景に描かれ、後景には5人の裸体の男性が描かれている。これら裸体の男性が描かれている理由については、さまざまな見解が存在する。 == 概説 ==
中央に大きく描かれた、幼児キリストを高くかかげるマリアがもっとも目立つ画面構成になっている〔d’Ancona, 43〕。マリアは地面にじかに座り、彼女と大地の間には何も敷かれていない。これはマリアと大地との結びつきをよく伝えている〔d’Ancona, 44〕。マリアの下に描かれている草は緑に塗られ、草が生えていないマリアの周りの地面とは好対照となっている。現在は経年変化で草は暗い色調になってしまっているが、もともとの草の色はもっと明るく鮮やかな色調だった〔Buzzegoli, 408〕。ヨセフは家長としてマリアに比べて高い位置で描かれている。マリアはヨセフの足と足の間に座っており、これはヨセフがマリアを守っているかのように見える。マリアのポーズについては、ヨセフからキリストを受け取ろうとしているのか、あるいは逆にヨセフに渡そうとしているのか議論がわかれている〔d’Ancona, 45〕。フィレンツェでは、聖母子とともに洗礼者ヨハネを描くのは伝統的な手法で〔Hartt and Wilkins, 506〕、この作品では聖家族と裸体の男性たちとの間の画面右に描かれている。 この絵画は今でも当時のままの額装であり、額縁の制作にあたってはミケランジェロが影響を与えたか、あるいはミケランジェロがデザインを手助けしている〔Hayum, 214〕〔ミケランジェロ自身が制作したという説もある〕。額縁には非常に凝った彫刻が施され、さらに5つの人間の頭部が三次元的に中空に突き出しているといるという変わったデザインとなっている。絵画の背景に描かれている5人の男性と同じ数の頭部ということに何らかの意味があるのかもしれない。ほかに額縁に彫刻されているのは三日月、星、植物、ライオンの頭である。これらの彫刻はおそらくドーニ夫妻それぞれの家の紋章を題材にしたものと思われる〔Painted Devotional Tondi, 220〕。また額縁には「月とライオンがリボンで結び付けられて」おり、二つの家が結婚したことを意味している〔。 画面中央やや下には水平な帯があり、前景に描かれた聖家族と後景に描かれた男性たちや洗礼者ヨハネとを隔てる役割を担っている〔〔〔Smith,85〕。背景の5人の裸体の男性たちが何を意味するのか、あるいはこの絵画でどんな役割を与えられているのかが、今までさまざまな憶測や議論のもととなってきた。聖家族は男性たちよりもより大きく描かれ、聖家族がいる地面と男性たちがいる場所との間には水があると考えられる〔。聖家族と洗礼者ヨハネは幼児キリストを見つめているが、男性たちにはキリストを直接見ている者はいない〔d’Ancona, 48〕。さらにはるか遠景には風景画が描かれている。
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